調停による解決

遺産相続は、法律で定めらた相続人全員の話し合いで自由に分けることができます。しかし、話し合いがこじれて(多くの場合は感情のもつれです)話し合いができない事態に至る場合があります。

そうなると、いつまでたっても遺産相続が解決できません。亡くなられた方の預金は凍結されて、預金口座からの引き落としなどの支払いもできないこともあります。

どうしても、相続人同士で話し合いができない場合は、やむをえず家庭裁判所を利用することになります。

家庭裁判所では、遺産相続等の家庭内のもめごとを扱います。遺産相続の分け方を話し合う場合は、まず、調停を申し立てることになります。

調停とは、まず、話し合いがこじれている当事者を家庭裁判所に呼び出して、裁判所の話し合いで解決できれば解決した内容を書面(調停調書といいます)にして交付してくれます。

この調停調書で不動産の名義変更や預貯金の解約などができます。裁判所でも話し合いがまとまらなければ法律と当事者の言い分を聞いて裁判官が分け方を決めてくれます。この裁判官が決めたわけ方を審判といいます。

審判の場合も裁判所が書面(審判書といいます)を交付してくれるので、この審判書で不動産の名義変更や預貯金の解約ができます。

ただし、家庭裁判所を利用したことで、裁判所に呼び出された方には、感情的なしこりができ、事実上、兄弟姉妹(親族)の縁を切る。という事態に至ることになります。

そうならないためにも、遺産相続については十分に配慮いただく必要があります。

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相続放棄とは

相続を放棄する。とは2つの意味があります。

1.事実上の相続放棄
「私は遺産を相続しない」という意味の書類に実印を押したことを世間一般に「相続放棄をした。」と言われることがあります。(以下、これを「事実上の相続放棄」といいます)

実印を押した書類のタイトルは「遺産分割協議書」「相続分不存在証明書」「特別受益証明書」など様々です。

このような書類に実印を押すことで、相続人同視では遺産を相続しないという合意に拘束されますが、被相続人の債権者(亡くなられた方に対してお金を貸している金融機関等)から、被相続人の借金(保証人の責任も含む)の返済を求められた場合には請求を拒否できません。


2.家庭裁判所に申請する相続放棄(民法915条)
法律上の相続放棄は、家庭裁判所に申請して受理されることです。

家庭裁判所に相続放棄を申請して受理されると「相続放棄受理通知書」という書類が交付されます。

「相続放棄受理通知書」は申請しなくとも交付されますが、「相続放棄受理証明書」という書類は裁判所に交付申請が必要です。遺産相続では「相続放棄受理証明書」が必要です。(申請しても受理されないと法律上の効力がありません

相続放棄の申請が家庭裁判所に受理されると法律上の相続人でない者として扱われます。被相続人の債権者に対しても相続放棄をしたことが通用しますので、被相続人の借金の返済を求められても拒否できます。

ただし、被相続人の相続開始(遺産を相続すること)を知ってから3カ月以内に申請しないと受理されません。相続放棄の申請は当事務所で取り扱っておりますのでご相談ください。


被相続人の債務の支払を免れるために相続放棄を申請する場合は、亡くなった方の遺産に一切手をつけないで下さい。特に被相続人の預金の解約や債務の支払はしないでください。預金の解約や債務の支払をしてしまうと、例え裁判所による相続放棄が認められても債権者から相続放棄を否定されて借金返済や保証人としての責任を求めて訴えられることもありますので、注意が必要です。

当事務所では、相続放棄の申請についても取り扱っておりますのでご相談ください。

遺留分とは

財産の所有者(=被相続人となる者)は自分の財産を生前に自由に処分(=生前贈与)できます。また、自分の死後に自分の財産を誰に引き継がせるかを自由に決める(=遺言)ことができます。

一方、遺産は遺族の生活の保障や遺族の貢献によって遺産が残されたことの清算の意味があります。

そこで法律は、一定の遺族に対して遺産をもらう権利を確保しています。この法律で確保された権利を遺留分といいます。

遺留分の具体的な割合は、相続人が親や祖父母だけの場合は遺産全体の3分の1、兄弟姉妹を除く相続人の場合(子供や孫と配偶者 子供や孫だけ、配偶者だけ、親や祖父母と配偶者)は遺産全体の2分の1です。

以上の割合の遺留分に自分の法定相続分を掛けた割合が自分の具体的な遺留分となります。

具体的な相続分はこちら → 法定相続分のフローチャート

例えば、妻と長男、長女が相続人の夫が遺言や生前贈与で妻に財産の全部を引き継がせた場合、まったく遺産をもらえなかった長男や長女が財産の全部を相続した妻(母親)に対して、自分たちにも遺産を分けるよう請求できる権利が遺留分です。

上記の例では、長男や長女が母親に遺産を分けるよう請求することを遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)といいます。

この権利を行使するかしないかは、長男と長女が自由に決めて差し支えありません。自分の母親に父親が遺産を遺したことに理解があれば、母親に遺産を分けるよう請求することはないと思います。

遺留分減殺請求が実務で現れるのは、遺族間に対立がある場合が多いようです。例えば、相続人同士の仲が悪かったり、相続人同士の交流が全くなかったり、被相続人と相続人が対立している場合等です。

遺留分を侵害するような遺言や生前贈与をする場合には、相続人同士が対立しないように十分な配慮や根回しが紛争を防ぐことになります。

遺言や生前贈与、複雑な相続関係の場合は早めに相談ください。

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