解決事例
事例の当事者を特定できないように立場を変えています。

■ケース 1(相続手続き放置によるもめごと)

相談者の方は、息子さんが住宅を建築する前提で相談にいらっしゃいました。
相談者の所有する土地は相談者の父親(以下「父」と表現します)の名義であることが判明しました。

父は35年前に、母は30年前に死亡していましたが、遺産相続の手続きを放置していました。相談者には兄と弟2人がいましたが、兄は戦死し、弟の一人が10年前に亡くなっていました。

生存している弟にはハンコはもらえるが、なくなった弟の子供(甥と姪)とは最近あまり交流がないが、4~5年前に法事で合っているので、ハンコはもらえるだろう。とのことでした。

甥と姪に依頼者から手紙を出してもらって遺産相続のための書類にハンコをもらいたいことを伝えてもらいましたが一向に返事がありません。

何度か手紙を出してもらいましたが、2年を経過しても返事がないため、家庭裁判所に手続きを申請しました。

しかし、家庭裁判所から甥と姪に出した文書も届かないため、手続きが全くすすみませんでした。

結局、甥と姪の住む関西に相談者が尋ねて会うことができ、最終的には応分のハンコ代を支払って印鑑をもらって解決しました。

この事例は、相談者の弟が生きていれば支障なく跡継ぎ相続ができたと思われますが、相続手続きを放置していたために多額の出費と時間と労力を費やして解決した事例です。

この事例は、遺産相続を放置すると紛争となったり、多額の出費、時間、労力などの無駄が出ることを示唆した事例でした。



■ケース 2(事実婚の遺産相続と相続人に行方不明者)

相談者は死亡した妻の遺産相続で相談にいらっしゃいました。なくなられた奥様とは婚姻届けを出していない事実上の妻(内縁の妻とも言われます)だそうです。
もちろん、相談者には内縁の妻の遺産については、一切相続権はありません。
内縁の妻には子供や親がおりませんでしたが、兄弟姉妹が5名おりましたので、その5名の兄弟姉妹が相続人でした。

財産は相談者と内縁の妻が半分づつ共有する不動産と内縁の妻名義の預貯金です。相続人である内縁の妻の兄弟姉妹4名は、内縁の夫として長年同居してきた相談者に財産を引き継いでもらうことに同意していました。

残る1名(内縁の妻の弟=以下「行方不明者」と表現します)は10年前から行方不明で、全く居所がつかめませんでした。

行方不明の相続人がいれば、行方不明者を除外して手続きを進めることはできません。行方不明者がいれば、行方不明者の代わりに手続きを進める人を家庭裁判所に選んでもらって、家庭裁判所から選んでもらった人と残りの相続人全員で協議をして分け方を決める必要があります。

行方不明者がいる場合、行方不明者の代わりに遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)をするための人は裁判所から遺産分割協議の許可をもらわなくてはなりません。

裁判所は、行方不明者に法定相続分に応じた遺産を与えないと許可を出さないことがあります。

この場合は、4名の兄弟姉妹は、代表した相続する一人に財産を全部相続してもらってから代表相続人が内縁の夫に遺産を贈与することで合意してまいた。

そこで、行方不明者にも応分の財産を相続させ、残りを一人の相続人に相続してもらって内縁の夫に贈与しました。

この行方不明者については、子供がおりましたので、子供の意向を確認し、行方不明者については事実上死亡が確認がされていないが、法律上死亡したものとして扱うようにする手続き(失踪宣告といいます)を裁判所に申し立てました。

この行方不明者が相続した応分の財産は行方不明者の子供に引き渡して手続きが完了しました。

この手続きには、3年という時間と多大な労力がかかりました。

内縁関係と行方不明者の存在は、相続では事前に対策(遺言や生前贈与など)を講じておけば紛争防止には有効な場合があります。

このようなケース以外にも将来、相続で紛争が予想されるような場合には、当事務所にご相談ください。



■ケース 3(見知らぬ相続人の出現)

相談者のお母様が亡くなられたので、長男であるご相談者がお母様の遺産全部を相続したい。とのいわゆる跡継ぎ相続の依頼でした。

遺産相続の場合、被相続人の方の出生から死亡までの連続した戸籍で法律上の相続人を確認して法律上の相続人全員の合意のある書面を提出して手続きをすすめることになります。

そこで、本件も、亡くなられたお母さまの戸籍を確認したところ、相談者が全く知らない相続人が現れました。

相談者のお母様は、相談者のお父様とは2度目の結婚で、最初の結婚はわずか6ヶ月で離婚しておりました。

しかし、最初の結婚相手との間に子供が生まれており、その子供は別の家に養子に出されていることが判明しました。

これには、相談者も寝耳に水で、大変驚かれ、困惑されていました。しばらくは、相続手続きどころではなくなり、手続きが中断しました。

しかし、時間の経過とともに落ち着かれ、相続手続きを再開しました。ただ、会ったこともない兄弟にどのように接触してよいか分からないと、大変困惑されました。

そこで、当職が責任を負わないことを条件に、会った事のない、兄弟宛に手紙を書き、返事を待つことにしました。

相手からは、忘れた頃に相談者の方に手紙が届き、一度会って話がしたい。ということになり、最終的には裁判所を利用せずに、遺産相続は解決しました。

このようなケースは大変希ですが、20数年の司法書士歴の中で、見知らぬ兄弟姉妹が現れたケースは3件あります。そのうち1件は依頼者の方の衝撃が納まらずに手続きに至っておりません。

別の1件は、20年以上も前のことですが、遠い親戚に間に入ってもらって、応分の遺産を渡してハンコをもらったケースがあります。

親が子供に自分の過去を内緒にしていることは希です。これらのケースは、遺産を相続する方よりも、遺産を持っている親が対策を講じるべきケースです。

子供に過去を打ち明けたくないような場合には、それなりの対策が必要です。また、遺された相続人が揉めないようにすることも遺産を持っている方の役目かもしれません。

もし、ご自身の遺産で相続人が揉めるようなケースが想定される場合は、当事務所にご相談ください。

当事務所オリジナルの小冊子「はじめての遺産相続」には、揉めそうなケースについても触れています。

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